相島の郷愁風景

山口県萩市<農村集落> 地図 
 
町並度 6 非俗化度 10 −萩沖の農業の島−

狭い谷間に密集する相島の集落

 
 萩港より約15km北西の日本海にある相島。一日3往復の旅客船が萩港とを結んでいる。
 本土側にある神社の古文書には、16世紀初頭に島から農産物が奉納された記録が残っていることから、既にこの頃には集落が形成されていたことがわかる。
 周囲10kmほどの小さな島で、海岸部に平地はほとんどない。但し取り立てて険しい山岳もなく緩やかな丘陵地帯が展開している。この辺りの島は、海岸線は断崖だが中央部が台地状となっているものが多く、船から見るとその特徴がわかる。これらは、火山活動によって形成された島なのだという。
 島の主産業は農業で、火山灰質の良質な土壌に恵まれておりスイカや薩摩芋が名産である。特にスイカは九州や大阪などにも出荷されている。漁業も行われているが、半農半漁というには農業の比率が非常に高い。古くは除虫菊や葉煙草の栽培も盛んに行われていた。
 集落は島の南部にある谷間に沿い展開する。この部分のみ台地が窪んで狭い平坦地があり、水も得易い地形であったのだろう。周囲の丘陵から三方を囲まれており、そこから見下ろすと石州系の赤褐色の瓦を中心とした屋根並が見渡せる。この俯瞰風景はなかなか壮観で、位置によっても色々な集落の表情を感じることができる。
 谷間の中心以外は斜面部であるため、石垣が多用された風景となっているのもまた集落の特徴的なものの一つである。家屋の塀などにも使われており、赤瓦と石垣というイメージが濃い。素朴な空積みの石垣は風情を感じる。
 歩いていると、しきりにエンジン音を耳にした。これは農作業車で、農家の多くが保有している。集落の北側や東側は畑が広大に展開しており、これも石垣で区切られ段々畑状になっているところもあった。軽自動車や単車も少しはあるが、車両といえば農作業車が圧倒的な存在感を示している。
 集落外縁の小高いところに2つの社がある。東側の八幡宮は農業、西側の大歳宮は漁業の守り神なのだそうである。
 








石垣と赤瓦が印象的な集落内


集落背後には広大な畑が展開する


訪問日:2015.11.22 TOP 町並INDEX