東山温泉の郷愁風景

福島県会津若松市【温泉町】 地図
 
町並度 4 非俗化度 4 −会津藩の奥座敷−
 




 東山温泉は会津若松市街地の東、平野が尽き湯川の渓谷に差しかかったあたりに展開する温泉地である。
 歴史は古く8世紀に遡り、当初は霊場とされていたが、14世紀頃になると一般の入浴客も訪れるようになったという。
 会津藩の湯治場として要人の訪れも多く、また山形県の湯野浜温泉、上山温泉とともに奥羽三楽郷と呼ばれ、歴史ある温泉としては有数のものであった。現在も市街地から10分ほどの好立地にあり、周囲の自然環境にも恵まれており奥座敷的雰囲気をかもし出している。
 この温泉街で圧倒的な存在感を示す旅館「向瀧」は渓流に面して木造の厳かな母屋をはじめ、広大な敷地を持っている。会津藩の保養所であった湯治場を明治初年に平田家が引継ぎ経営してきた老舗旅館で、登録有形文化財となっている。この旅館の存在そのものが東山温泉の町並的な景観に貢献している。
 この向瀧旅館と川を挟んだ左岸側には街路に沿い旅館街が展開する。一部には昔ながらの木造の建物や、射的場などもあり、昔ながらの温泉地という風情が漂っている。
 


代表的な老舗旅館・向瀧付近の風景






 私はその界隈にある素朴な旅館に泊まった。昭和の温泉宿そのもので、設備の充実度を求める客には不向きだろうが、レトロ的温泉情緒を感じるには十分なものだった。
 ご主人の言葉の中に、「昔はこの前の通りも賑やかだったが・・」というのがあった。温泉人気は衰えることなく続いているが、宿泊客が下駄を履いて町をそぞろ歩くといった風情は、最近では余り見られなくなったのだろう。当日こそ連休中で他に多くの客が見られたが、温泉客もこのような昭和的な宿は選択肢に挙がり難いのかもしれない。
 川沿いには大型のビル型旅館もあったが、営業しているかどうかわからないような雰囲気であった。
 近年の温泉町の明暗を見る思いも抱きながら後にした。





訪問日:2015.09.20・21 TOP 町並INDEX