赤羽根の郷愁風景

愛知県赤羽根町<農漁村集落> 地図 <田原市>
 
町並度 4 非俗化度 10 −海食崖上に展開する集落 長屋門が特徴−



 
 

街道集落的な展開も見せる赤羽根の町並 


 三河湾を区切る渥美半島は比較的低平な土地が展開する中で、この赤羽根付近には半島最高峰の大山(約320m)など比較的起伏が多く、従って水も得やすく集落が発達するには適地であったのだろう、古くから家並の連なりがあった。
 中世には赤羽根郷と呼ばれ、江戸期は田原藩領に属した。この付近の海岸線は砂丘状で、遠州灘からの風波による侵蝕により海岸線の後退が著しかった。中世以降伊勢への道筋にもあったが、波にさらわれる形で何度か内陸側に移動したようだ。それでも小さいながら入江を有し、避難港として利用されたりと港が発達した。江戸後期には海上警備の拠点として遠見番所が置かれている。
 また街道上に市が開かれるなどして商店・人家が集まった。今も市場という字が残っている。商工業としては余り大きな発達を見なかったようだが、酒造家や漁獲の加工(肥料用の干鰯など)などを行う家があった。漁業は地引網が盛んで鰯、鯖、鯵などのほか、海苔などの海藻類が水揚げされた。
 現在は産業的には漁業よりも温室を中心とした農業が主体といえる。主な集落は国道より南側にあり、その先は海食崖となっている。特徴的なのが長屋門風の門構えのある農家が多いことで、内部に広めの庭があり主屋や納屋がある。恵まれた土地があるから可能なのだろうが、裕福さを感じさせる佇まいである。漁港より西、中世古、上り瀬古という字が見られる辺りには、街道集落的な家々の並びが見られる。これが移設された旧伊勢街道沿いなのだろう。平入で切妻の家々が続くが、そうした中にも長屋門風の構えが見られた。
 歩いていてあちこちに常夜灯が目につくのも特徴的で、これは何のために設置されたかはっきり判らなかったが、秋葉山と刻まれているものが多く、道案内というより秋葉神社を祀ってのものであるように思えた。
 



 
長屋門風の構えが目立つ  
 



 
   
訪問日:2024.01.03 TOP 町並INDEX