土居の郷愁風景

高知県安芸市<城下町> 地図
 
町並度 6 非俗化度 5 −生垣に囲まれた南国らしい城下町−

 
 
 近年はプロ野球球団のキャンプ地としても知られる安芸市。一方当所は武家屋敷街が集中して残る貴重な一角もある。
 武家屋敷群が見られるのは現在の市の中心より1km余り北側の土居地区である。ここは土佐藩家老五藤氏が安芸城に居を構えてから整備され、城の周囲に濠を穿ち、周囲に武家を住まわせた。ここが「廓中」と言われるのは、その成立の独立性によるものである。周囲が田園地帯であることは、今も昔も変りない。
 


                 土居廓中の町並

 

 明治に入っても、この地区に足を踏み入れるには農民は頬被りや鉢巻を取ったという。
 一般公開されている野村家は、五藤氏に仕えた上級の家臣であり、街路に面した門以外にも塀重門」という一回り小さな門を構えている。また、家臣が身を隠し、訪問者を確かめる構造となっている居間等、生々しい武家屋敷の用心体制が見受けられる。
 廓中は土用竹と呼ばれる小ぶりな竹の生垣が連続しており、それも細やかに手入れされていて端正な味わいを醸している。板塀、土蔵、武家屋敷、耕作地が交互に現れ、一つの大きな庭園ともいえるような雰囲気を持っている。廓(くるわ=城や砦など一定の地域を限り、その周囲と区別するために設けた囲い)の言葉通り、周辺とは画然と町並景観が変わるのも面白い。ここでは歩く速度が自然にゆっくりとなり、時間の経過が緩やかに感じられる。






古びた土蔵が生垣とよくマッチしています。 南国らしい武家街です。




廓中より南に外れてもこのような佇まいが残っています。これは外濠を巡らし、水路の水を邸内に引き入れていました。 廓の南外れにある、明治時代より時を刻みつづける時計台。「野良時計」として国道沿いでも案内標識になるほどこの町のシンボルです。



訪問日:2002.04.28 TOP 町並INDEX