安芸の郷愁風景

高知県安芸市【商業町・港町】 地図
 
町並度 4 非俗化度 8  −土佐東部の中心地−






本町一丁目の町並
 
 


 安芸市には土居廓中という武家町の遺構が良く残る町並があり知られているが、ここでは国道55号線より海側の市街地に残る町並について紹介する。
 町場としての安芸の町は複数の側面を持っていて、太平洋に面した港町、東廻りの参勤交代路の宿場町、そしてそれを包括する在郷商業町としてである。中世に安芸氏がここに拠点を構え、その後山内氏が土居廓中を本拠地としていたこともあり、付近一帯の中心都市として古い歴史を持っている。
 ここは江戸期の記録によれば70余隻の廻船を有する大きな港町であったが、現在古い建物の見られるのは旧街道に沿った部分を中心に街道集落的に連なる。往時は土佐藩主の宿泊所も構えられていて、大名行列は田野を経て奈半利から尾根道を伝い阿波国境に近い野根(現東洋町)から再び海岸沿いの道を辿っていた。
 平入り・切妻の伝統的な町家建築が見られる中に、この地方独特の水切り瓦を妻部にはめこんだ土蔵があちこちに残っている。それらは大柄なものも多く、町として繁栄していたことを示す生き証人だろう。酒造や製紙をはじめ、藩の御用瓦として瓦産業も盛んだった。
 町の西側は繁華街となっていて、ここで面白い現象が見られる。水切り瓦の土蔵が飲み屋などにそのまま利用されているのである。窓の少なく頑丈なつくりで防音性に富んだ土蔵は、考えてみると飲み屋には適している。素材を上手く利用したと言うか、いずれにしても独特の風景が展開している。
 私が訪ねたのは盛夏の頃で、水切瓦のある妻面の漆喰に陽射しが反射して眩しかった。家々の建ち並びに比べ街路も割合広々としており、南国らしい雰囲気を感じさせる町並である。
 




本町一丁目の町並 本町二丁目の町並




繁華街の一角にも土蔵が点在し店舗として利用されている例もある

訪問日:2007.08.15 TOP 町並INDEX