川尻の郷愁風景

広島県川尻町【商業町・産業町】 地図 <呉市>
 
町並度 4 非俗化度 8  −野呂山と筆の町−





川尻の町並


 川尻町は呉市の東に隣接する町で(現在は編入)、瀬戸内海に南面し、北は野呂山を筆頭とした山地が展開し、海岸沿いのわずかな平地に市街地が開ける。
 海沿いの町ながら、江戸時代には漁家よりも農家の人口の方が多かった。19世紀前半の記録では、5割が農業を営み、漁業は2割に過ぎない。
ただし、野呂山は度々洪水被害を麓に及ぼし、土石流により耕地が破壊されることもしばしばで、決して恵まれた耕地とはいえなかった。藩は野呂山の開拓も手がけたが、害獣などに阻まれて実現しなかったという。
 この町の本格的な発展は幕末に毛筆製造が導入されてからだろう。 明治になって会社組織化され本格的な生産体制が組まれ、川尻筆として各地に販売された。零細な農村だったこの町が、産業町として隆盛期を迎えた。
 国道より山側、呉線との間が古い川尻の町で、町家建築や土蔵なども残り古い町並を形成していた。連続した箇所は多くないものの、それでも国道の一本内側の路地、そしてかつての中心街と思われるやや広い街路に沿って残り、一部には風格を感じさせる敷地の広い家屋も見られる。これらはやはり筆生産による恩恵なのだろう。
 通過点になりがちなところで、予想外の町並を見た思いがした。
 










訪問日:2014.01.19 TOP 町並INDEX