尾崎の郷愁風景

兵庫県赤穂市<産業町> 地図 
 
町並度 5 非俗化度 9  −製塩と船稼ぎを生業とした町−




路地に町家風建築の連なる尾崎の町並


 赤穂の市街中心・旧城下町の加里屋地区から千種川を挟んだ対岸にある尾崎地区。北側は小高い丘が控え一角には赤穂八幡宮が鎮座し、南側は低平な土地で海浜公園なども整備されている。
 古くは南側の一帯は海であり、地区は海岸に面していた。一帯では製塩が盛んに行われ、宝永3(1706)年の指出帳によると「畝数六四町・塩浜四五町・竃屋一〇八、塩浜圦樋一〇八、船持三七、船数五四」とあり、製塩業を中心に船稼ぎも行われていた様子がわかる。また紺屋や桶屋、大工などの職人や医者なども記録されている。また「女は塩浜勤め、男も塩耕作のほか商売」と稼業の実情が記されている。
 地図を見ても南側や東側の新興地区とは異なり、細い路地が入組んだ様子がわかる。古い町並はそれらの小路沿いを含め面的な展開を示していた。二階部に虫籠窓をしつらえた建物があちこちに見られ、細やかな出格子が残るなど町家・商家風の建物が目立ち、多くの家々は土蔵を従えていた。それらは製塩や船稼ぎで裕福だったことを示しているようであった。路地は時に袋小路になったり辿っていくうちに何時の間にか元に戻ったりして秩序無く、密集度が高い点は漁村集落にも通じるものがあり、なかなか独特さを感じる古い町並であった。
 徐々に道路改修が行われつつあるようで、路地に残る古い町並も近い将来には失われるのではないかと心配になった。その時期は少しでも遅いものであってほしいと思いながら後にした。
 赤穂八幡宮は格式ある佇まいで、尾崎の町の歴史が古いことを証明しているようでもあった。毎年10月に行われる例祭は近郷最大の祭といわれ、三台の神輿と36人の頭人が練り歩く行列、獅子舞などが演じられる。











赤穂八幡宮
 
訪問日:2019.07.13 TOP 町並INDEX