穴虫の郷愁風景

奈良県香芝市<農村集落> 地図
 
町並度 6 非俗化度 10 −狭い路地に沿い特徴的な旧家が残る−


 県の西部、1kmほどの間を置いて並行する近鉄大阪線の二上駅と、南大阪線の二上山駅に挟まれた一帯が穴虫と呼ばれる地で、二上山北麓の緩やかに傾斜する丘陵地帯となっている。両駅の間を歩くと、大阪近郊地域とは思えぬ佇まいが残っているのに気付く。


穴虫の町並




穴虫の町並 むくり屋根を持ち煙抜きの小屋根を従えた町家




大和棟の民家(左)や塀で囲われた屋敷が目立つのもこの町並の特色である。
 

 
 穴虫とは風変わりな地名だが、同名の峠が大阪府との境にあり、一説では穴に伏すような(峠の)地形から発祥したとのことである。この穴虫峠を通る往還は歴史の古い道で、古代には河内と大和をつなぐ主要道であったと考えられている。
 二上駅からまっすぐ南へ伸びる幅3mほどの道に沿い、格調高い民家があちこちに見られる。両側より一段嵩上げされた茅葺の屋根を持つ大和棟の家、見事なむくり屋根を持つ商家風の建物、切妻平入りの町家など、片田舎といっては失礼だがそのような地区に多く見られるということは、大和というところの懐の深さを感じさせてくれるようだ。
 古い家々はほぼこの細道に沿って見られるから、何らかの街道に沿っていたと思われるが、主要道なら江戸期であってももっと幅広い筈である。家々も塀に囲まれた屋敷型が目立ち、また隣同士と間隔を持った入り母屋形式の屋根を持つものも多いことから、裕福な農村であったものと思われる。
 この町についての歴史が今ひとつ不明で、金剛砂とよばれる砂の産地であったらしいが、それほど商業として発展したとの記述もない。生業は農業が主体の集落であったということで、家々の外観からも農村集落と判断したい。
 街路の狭さが古い町並としての趣を増しているようだ。他の多くの奈良県の町並は商業都市として栄えたものであり、軒を並べた町家が広い街路の両端に並ぶという姿が一般的だが、ここでは道が狭く、また塀が巡っている。独特の家並景観であった。
 


訪問日:2005.12.11 TOP 町並INDEX