有福温泉の郷愁風景
島根県江津市<温泉町> 地図 町並度 4 非俗化度 4 −斜面上に開ける歴史深い温泉街− |
坂と階段だらけの狭い土地に鄙びた旅館、民家がひしめき合います。 | ここが有福温泉の表玄関。左が三階旅館。 |
共同浴場の一つ御前湯。建物は昭和初期の洋風建築です。 | 温泉街の最奥部より。ここでもやはり主役は石見瓦です。 色彩の微妙な違いが興味深いところ。 |
温泉地の少ない中国地方において、江津、浜田市周辺の山間部は比較的密度が濃いと言える。しかしいずれも有名なものではなく、山懐や田園のなかに小さな温泉街を形成している。 有福温泉は、それらの中では非常に古い歴史を持つ。江津市内ではあるが、中心からは10km以上も内陸に隔たった山間の谷間に展開している温泉街は、僅かに開ける平地に留まらず斜面にも及び、それらは細い路地、階段などで連絡されている。団体観光客を意識したビル型旅館、ブームにあやかった施設なども全くない昔ながらの出湯といった雰囲気のある貴重な温泉地である。 この温泉の歴史は1300年にも及ぶとも言われている。俗化していない温泉地を象徴しているのが、3つの共同浴場であろう。温泉街の坂の入口、三階旅館という老舗旅館の近くにあるさつき湯、そこから急坂と石段を登ったところに一際異彩を放つ古い洋風建築の御前湯、やや上流側の川沿いにあるやよい湯である。やよい湯は18世紀以来の伝統的な共同浴場だ。なお、三階旅館とは妙な名称だが、この旅館が建てられた当時、三階建て以上の旅館は存在しなかったことから名付けられたという。 有福の町並は、立体的に展開するところに味わいがある。旅館といっても通常の民家と外観はさして変わらぬ石州瓦葺の低層建築も多い。それだけに高台からの眺めは、赤瓦のひしめく湯治場といった趣も濃い。客層も若い人は比較的少なく、小人数のお年寄が目立った。温泉ブームに便乗したようなところが多い中で、貴重な昔ながらの佇まいが保たれているということで、郷愁風景として紹介する。 |
訪問日:2002.05.19 | TOP | 町並INDEX |
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