有馬温泉の郷愁風景

神戸市北区<温泉町> 地図
 
町並度 6 非俗化度 1 −阪神地区の奥座敷−







有馬温泉の土産物街


 有馬温泉は「西の有馬・東の草津」と昔から言われる全国屈指の温泉地だ。六甲山の北麓に湧き出る温泉群は食塩泉を中心に炭酸泉もあり、それぞれ金泉・銀泉と呼ばれ、またラジューム泉もある。子宝の湯としても知られまた保養地として奥座敷と呼ばれるほど古くから多くの客を迎え入れてきた。
 古くは有間と書き、また湯山村とも呼ばれた。奈良時代より温泉の記述が残り、「枕草子」にも「ありまのゆ」とある。戦国時代になると東屋・上人屋などの屋号を持つ温泉宿が記録に残り、既に現在にある温泉場としての体裁が整えられていたことがわかる。また身分の高い者は、使用人に湯を運ばせて温浴することも行われていたという。また豊臣秀吉は大火に見舞われた温泉街の復興などに尽力し、また自らも有馬に通っていたこともあって貴賎の別を問わず知名度が増していった。
 温泉街は山間部の谷間に開けることから起伏の多い変化に富んだ地形のもとに広がっている。周囲の小高い所を中心に大型のビル旅館が建ちならび、谷あいには比較的小規模な旅館街が展開していた。観光バスの観光客がどんどんと入ってくる一大温泉地としては意外と素朴さも残されているものである。その思いが強まるのが有馬温泉駅付近から谷奥に向う街路の突き当たり、路線バスの転回所の付近から左に折れる土産物街だ。登り勾配の細道に沿い、名物炭酸煎餅をはじめとした有馬名物を扱う店が連続している。それらは伝統的なつくりを残し古い町並を展開させていて、街路が穏やかな曲線を描いていることもあって視界の先が家並で占められ、迫力のある風景の連なりがあった。
 六甲山に限られているとはいえ、市街地より30分ほどでこのような大温泉地に辿り着けるのである。そしてそれが古い町並を従えていることは一層貴重性が高いものといえよう。
 





訪問日:2008.11.23 TOP 町並INDEX