有田の郷愁風景

佐賀県有田町<産業町> 地図
 
町並度 6 非俗化度 4  −世界に名高い有田焼の故郷−


もっとも有田らしい町の風景は裏通りにあります。煉瓦の煙突、石畳など風情のある小路です。 この塀は使用済みの窯の煉瓦、壊れた皿などを材料にしています。廃物利用なのですが独特の雰囲気がありこのような路地を中心にあちこちに残っています。




焼物の店の連なる通りは古びた構えが多く、産業・商業町としての歴史の古さを感じさせます。




札の辻付近の町並 手前は宮内庁御用達の陶磁器を古くから扱ってきた深川製磁の建物。向いには洋館もみえます。
 


 世界にその名を知られる陶磁器の産地・有田の町は、訪れると意外に観光客に目を向けた色が少ないのに気付く。郊外には有田焼の直売所、テーマパークもあるが中心街は小さな小売店が連なり、その渋いいでたちも好ましい。歴史のある産業町らしい町並は上有田駅付近より約1kmにわたり続いており、この界隈が重要伝統的建造物群保存地区となっている。
 我が国の陶磁器の発祥地の歴史は400年にも及ぶ。上有田駅の北方に泉山磁石場があり、これは鍋島藩が慶長の役からの朝鮮撤退時、当地から多くの陶工を連れ帰った、その一人が発見したものである。現在でも有田の命綱である。
 ここは江戸時代皿山代官所が置かれ、藩の厳しい管理下にあった。かつて高札のあったといわれる辻、現在も札の辻と呼ばれる周辺がかつての町の中心であり、盛んに市が立っていたという。この周辺には洋風の建築もよく見られ、明治以後海外への輸出も始まり文化の交流する機会の多かったことを物語っている。和風の伝統的な商家は、ずしりとした妻入りの二階建が多く、白漆喰まれに鼠漆喰で、二階には角型の窓が並ぶ、九州で比較的よく見られる様式が多い。
 ここはまた裏小路にも味わいがある。ドンバイと呼ばれる廃棄された窯の煉瓦、失敗して商品にならなかった皿などが土塀に使われ、その向うには煉瓦の煙突が見える。ドンバイ塀の通りと呼ばれる小道は、表通りとはまた異なった風情が感じられる。
 GWの陶器市に買物客が毎年雪崩れこむ以外は、静かな焼物の里の風情を醸しているようである。

 

訪問日:2002.07.20 TOP 町並INDEX