芦川の郷愁風景

山梨県芦川村<山村集落> 地図 <笛吹市>
 町並度 5 非俗化度 8 −独特の兜造り民家の多く見られる渓谷沿いの集落群−





 




中芦川の町並


 この旧芦川村域は富士川の支流である芦川の上流域一帯を占め、北側の甲府盆地、南側の富士五湖地域とはそれぞれ峠越えとなる地形であり、それらの山地に挟まれた細い谷間となっている。地区の東西端に甲府盆地と河口湖方面及び精進湖方面を結ぶ道路が南北に走り、観光の車両も通行もあるが、その間を東西に結ぶ形となる芦川の谷沿いの道は交通量も少なく、また幅員の狭い箇所もあり秘境感を覚える。もっとも、河口湖方面とを結ぶ若彦トンネルが開通し富士吉田方面との利便性が良くなったのは最近のことで、長らく陸の孤島といってもよい地域であった。
 狭い谷に沿い幾つかの集落が点在し、その家並の風景は他地域とは隔絶されているためか、かなり独特のものである。
 特徴的なのは兜造りと呼ばれる、妻側の屋根を持ち上げたような形の家屋が見られることだ。この造りは、近辺では東京都奥多摩地区などでも見られるが、山梨県内ではそれほど広範囲に分布していない。
 この造りが見られるようになったのは明治になって養蚕が盛んになってからといわれており、屋根裏を効率的に使えるこの構造が採用されたのだろうか。芦川の渓谷沿いは、富士川の支流であることから古くより甲府盆地各地よりも駿河方面に利便性がよく、東日本一帯に比較的広範囲に採用された兜造りが伝わったのかもしれない。
 

 


 主に村の中心部であった中芦川、下流側の鶯宿の両集落に上記のような特徴のある建築が多く残っている。谷が狭いといいながら、集落周辺では家並が立地し得るほどの平地または緩い傾斜地があるので、いわゆる山岳集落風ではなく比較的平坦なところに固まった印象が強い。多くは平入りの形をとり、トタンに覆われた屋根が多く、一部はもと茅葺屋根だっただろうと思われる。
 観光路とは無縁の深い谷間の集落だが、その独特さからもっと注目されても良いと感じた。




鶯宿の町並

訪問日:2015.05.03 TOP 町並INDEX