阿須那の郷愁風景

島根県羽須美村<市場町> 地図 <邑南町>
 
町並度 5 非俗化度 10 −山懐に人知れず開ける赤瓦の町並−


 

短い街道筋に濃密に連なる阿須那集落




 阿須那は羽須美村が成立する前に村の中心をなしていたところで、江川の支流出羽川の流域に集落が立地している。
 幹線道路からは外れた地区で、現在はなかなか通過点にもならない地区である。しかし古くは祭礼市が盛んに行われ、賑わいを示していたという。
 




 
 その中心は一帯で盛んに行われていた牛馬市であった。出羽代官の保護のもと、呉服をはじめ酒や小間物、魚や大工道具、薬種などの市見世が開かれている。最盛期は18世紀初頭から19世紀半ばにかけてであった。今とは違って中国山地では鉄穴流しという一大産業があった。町の繁栄はその影響によるところも大きかっただろう。
 当時からの町の中心を感じさせるのは県道に直交する街路、出羽川に突当たる数百メートルの短い街路沿いである。県道を走っていても通り過ぎてしまうようなところである。しかしそこにはえもいわれぬような高濃度の町並が残っていた。
 2階に木製の欄干を残す旅館、どんな旅人をこれまで受け入れてきたのだろうと思わせる。そして雑貨屋や造り酒屋の姿。それらは現役であり、今でも地区の生活の一部として息づいている。周囲は過疎の山村風景が連なっている中で、狐につままれたような感触すら抱く集落風景だった。
 屋根瓦は石州瓦の赤褐色に統一され、家並の連続性が高いのもこの町の印象度を高めるのに寄与しているようだった。

 
訪問日:2010.05.14 TOP 町並INDEX