福江の郷愁風景

愛知県渥美町【港町・陣屋町】 地図 <田原市>
 町並度 5 非俗化度 7  −三河湾物流の拠点−




 

 伝統的な構えの料亭旅館建築が複数見られる


 渥美半島の先端近く、三河湾側に福江という地区がある。半島随一の港で、その歴史は江戸の昔まで遡ることが出来る。
 福江は大垣藩の支藩・大垣新田藩(畠村藩)の陣屋が置かれたところで、その跡地は公園となっている。この小高いところから西側の港にかけて町場が形成され、陣屋と港を結ぶ坂道には城坂という呼び名も残っている。坂を下るにつれ料亭を思わせる大柄な建物が幾つか見られ、賑わいの町であったことが伺える。
 畠村藩は1万石ほどの小藩ではあったが、港には150石船が出入りし、主に三河湾内の往来ながら物資輸送の拠点として発展を見た。湾の南端の海域に面し、湾岸のどちらにも水運が便利という地形的条件も寄与していたのだろう。明治に入ると海運を行う法人も組織され、熱田・亀崎・半田・蒲郡・豊橋などの各地とを結び、また伊勢方面へも航路が伸びた。昭和に入ると陸上交通が整備され徐々に衰退したが、戦後しばらくまでは港町として重要な役割を果たしていた。
 町の中心は陣屋のあった台地下の下地地区で、昭和初期頃は呉服店をはじめとした各種商店のほか、料理店も多く、旅館業を兼ねる料亭などもあり大層賑わったという。今その地区を歩いて一番印象的に映るのが往時の名残を留める料亭群で、一部は登録有形文化財となり現役で営業されている。そのひとつ角上楼は昭和元年創業そのままの堂々とした構えを有し、町のシンボルのようである。周辺にも幾つか料亭旅館があり、城坂の入口付近も料亭建物と洋館が見られる風情ある佇まいである。
 渥美半島中央部から先端付近にかけては農村集落主体である中、特筆すべき発展を見た町と言えるだろう。




「城坂」の町並




 かつて各種商店が建ち並んでいた下地地区のメインの通り

訪問日:2024.01.03 TOP 町並INDEX