淡路由良の郷愁風景

兵庫県洲本市<漁村・城下町> 地図
 町並度 5 非俗化度 8 −淡路最大の漁港もかつては政治経済の中心であった−

 洲本市由良地区は淡路島が最も東西の幅を広げたその東岸、東は紀淡海峡を経て和歌山県加太と対峙する。いかにも海運上重要な所と思わせる位置だ。
 事実港町として古くから機能しており、中世から頻繁に港としての地名が見える。文安2(1445)年の「兵庫北関入船納帳」には年間117回、当地の船が兵庫津に入港したことが記録されている。それらの荷の多くは阿波産の木材であった。
 また城も構えられ、由良城は淡路水軍の拠点として多大な影響力を持ったが、江戸に入って暫くすると城下町の機能の多くを現在の洲本市中心部に移してしまった。それは淡路一国を支配するにあたり、島の東端に突き出た位置にある地理的不利もあったのだろう。かくして政治・軍事的中心としての役割は終えたが、以後も港町として特に紀淡海峡を通過する諸船の風待ち港として繁栄した。漁港としても賑わい、今でも県内最大の漁獲高を誇っている。


由良の町並






 現在町を歩いても城下町としての面影は皆無で、実態は漁師町だ。車が漸く行き違えるほどのかつての主要道と思われる街路沿いには平入りの家屋が密集している。虫籠窓のある商家風の建物は見られず、古い建物の多くは明治から昭和初期以降に建てられたと思われる。
 横道は趣のある路地風景を所々で演出し、それが尽きると或る所では坂道につながり、また他の場所では船溜りに出る。今でも小さな漁船が舫われている一角は非常に穏やかな水辺の風景で、内湾の漁村の原風景を見るようであった。




町の裏手に当たる部分に船溜りがあった


訪問日:2010.09.19 TOP 町並INDEX