三野の郷愁風景

徳島県三野町<商業町> 地図  <三好市>
 
町並度 3 非俗化度 9 −吉野川中流左岸の町 金毘羅への客や物資輸送の拠点だった−
   


 
 三野は県の北西部、吉野川中流左岸の町である。北に讃岐山脈を背負い、一方川沿いには比較的平地が展開している。但し讃岐山脈から流れ下る水量は少なく、吉野川本流からの揚水も難しく農作特に稲作には不向きな土地で、江戸期の頃は平地では藍作、山地では煙草などが主で、その他甘藷や菜種等が栽培されていた。 
 旧三野町役場の建物  
 しかし吉野川は別の恩恵を三野にもたらしていた。吉野川の渡しが最大4箇所あり、特に江口の渡しは吉野川中流域一帯の諸村から金毘羅への道として大いに利用された。険しい阿讃国境の山地を控えるも、讃岐の南側玄関口といった位置を占めており、往来も多かったという。大正初期に徳島本線が開通すると物流も盛んになり、多くの荷が吉野川を横断した。 

 


 加えて、複数の街道もここを通った。川北街道という吉野川右岸を辿る街路が下流側と池田とを結び、さらに伊予に抜けていた。讃岐に抜ける街道も複数あり川北街道と交差していた。そうした往来により、小さいながらも在郷商業町として町場の発達を見たようだ。
 支流河内谷川の合流点の東側に開ける市街地は、市役所支所などのある東西の街路を中心に展開していた。これが川北街道なのだろう。古い町並という観点では今一つ連続性や質の面で物足りぬ感はぬぐえないが、昭和9年築の旧町役場が洋風の構えを残すなど、建物には賑わいの歴史が刻まれていた。わずかながらも袖うだつを持つ家もあった。
 交通の幹線路から外れた位置にあり、全体的に静かな佇まいであった。
 


 


 
   


 


 

訪問日:2020.11.22 TOP 町並INDEX