鉄輪温泉の郷愁風景

大分県別府市【温泉町】 地図 
町並度 4 非俗化度 3 −一大温泉地・別府を象徴する蒸気と湯治宿−


 別府を象徴する風景というとこの鉄輪温泉をイメージされる方も多いだろう。旅館街から濛々と湯気が立ち上がる風景、また点在する地獄を巡る観光客も多い。別府の地形は広大な扇状地となっており、鉄輪地区は扇頂近くの北部を占める。この地区だけで源泉が250ほどあるといわれ、泉温も高く、また泉種も多岐に渡っている。



 






 鎌倉期の僧侶・一遍上人が開いたともいわれる歴史を持ち、熱湯や蒸気の噴出する一帯を熱の湯、渋の湯、蒸し湯など浴場を整備したという。
 観光客の訪れが絶えない一方で、市内の他の温泉地と比べて
最も昔ながらの湯治場といったイメージの強いのも鉄輪温泉の特徴である。古くから地元の人たちは調理などに温泉やその蒸気を利用してきて、生活の一部となっていること、長期滞在客用の貸間と呼ばれる宿が多く、観光旅館街よりは湯治場として発達したことが理由だろう。大正初期の年間湯治客は約7万、昭和15年は10万を超え、第二次大戦中は傷病兵の温泉治療場として活用されたという。一方で大正6年に地獄を巡る観光バスが運航開始、昭和3年には全国初となるガイドが添乗する定期観光バスとなるなど、観光の面でも先進的なところであった。
 幹線道路沿いや地区を取り巻くあたりには大型の観光旅館も見られるが、路地のような細道も展開する地区の中心部を歩くと、現在も貸間として客を泊らせる施設が多く眼につく。共同浴場も多く、それらは組合員が管理し一般客にも開放しているものである。入浴料は100円程度と安く、中には無料のものもあった。普通の民家とそれほど変らない造りの建物でも、商人相手の素泊まり旅館など温泉を商売にする宿も眼についた。
 斜面に開けるこの鉄輪付近では、冬場を中心に濛々と各旅館から湯気が立ち上る迫力の風景が見られる。所々にある配湯設備などを見るとさながら化学工場のようでもある。
 
 









訪問日:2018.11.24 TOP 町並INDEX