坊津の郷愁風景

鹿児島県坊津町【港町】 地図 <南さつま市>
町並度 4 非俗化度 7 −薩摩半島南西端 対外貿易で賑わった−
 





 坊津は薩摩半島の南西端を占め、東シナ海に接している。半島と入江が交互に展開するリアス式の海岸で、その分入江は波静かであり港には好適であった。東は鰹の水揚で有名な枕崎市に接している。
 港としての歴史は非常に古く、古代より大陸航路の要衝として賑わっていた記録が残っている。また遣唐使船の寄港地にもなったという。当港について、『地理纂考』には、「皇国の三津と称せられる名港にて、異国往来の要津」と記述されている。三津とは筑前の博多津、伊勢の安濃津とこの坊津の三つの港を示している。
 全盛期には港内が帆で埋め尽くされてしまうといわれるほど賑った地で、特に知られているのが鎖国政策後も幕府の眼をかいくぐって行われていた密貿易である。地形的に国内でもっとも南蛮との距離が近い位置にあること、地形的に隔絶されていることもそれを可能にしたのだろう。しかし、18世紀前半の享保期に幕府が海事統制を強化したことで、坊津は貿易港としての役割を終える。
 以後は主に漁村としての経過を辿り、枕崎とならび鰹漁が盛んに行われた。
 坊津は4つの浦の総称で、その中心となるのは坊という入江である。かつての密貿易屋敷もここに存在していた。ただ今訪ねると繁栄を極めた貿易港というよりは、どちらかというと零細な漁村というイメージが濃かった。その役割を終えて長く年月が経過しているからだろう。しかし、石畳の街路や古錆びた石塀などを眼にすると、やはり深く豊かな歴史が育くまれていたのだという思いを抱く。対外貿易港として栄華を極めた頃の心意気は漁民に受継がれているのかもしれない。
 












訪問日:2014.01.04 TOP 町並INDEX