坊勢島の郷愁風景

兵庫県家島町【漁村】 地図  <姫路市>
 町並度 5 非俗化度 8 −播磨灘の活気に満ちた島−

   


 播磨灘に浮かぶ家島諸島は相生の南東沖、40もの島々で構成され、比較的島の少ない瀬戸内海東部にあって群島をなしている。
 主な集落は島々の中心となる家島と、その南西に位置する2平方キロほどの坊勢(ぼうぜ)島に集中している。ここでは坊勢島の町並風景を紹介する。








 






 
 坊勢島は家島同様、姫路港から船便により結ばれており、その便数も比較的多く離島の割には訪ねやすいところである。連絡線が島に近づくと、平地がほとんどなく家々は斜面を駆け上がるように立地していることに気づく。
 古くは坊勢浦と呼ばれ、伝説によると9世紀頃に比叡山の高僧がここに流された時に、その僧を慕う弟子が移り住んだことが島名の由来という。純粋な漁村として時を刻み、明治期になってから泉州(現在の大阪府南部)より効果的な漁法が伝えられてからは周囲の好漁場を背景に飛躍的に漁獲高が増した。明治19年には既に200隻弱の漁船を有した記録があり、基幹産業としてゆるぎない地位を確立した。
 この島を歩くと非常に特徴的な点が幾つか見出せる。まず第一は活気である。漁港には現在も数多くの漁船が繋留され、しかも外観も立派なものが多いのが特筆される。船首に精緻で豪華な彫刻を施された船が多く、他の漁村ではなかなか見ることのできない風景である。また、住民の姿を多く目にするのも離島集落としては珍しく、しかも比較的若い人の姿も目立つ。
 さらにこの島の集落を形成する家々が比較的新しいというのも意外であった。これは古い町並としては評価が下がる要因であるのだが、それだけ漁業が潤っている証明だろう。但し、大半は斜面上に立地しており、狭い路地に沿い古びた家の向き合う風景もある。一部では階段をなしまた路地から一段下の屋根を見下ろし、その先には海の景色が広がる。密集漁村集落の典型であり、それだけで風情は濃く感じることが出来る。
 なお島の人はそのような路地にまで自動二輪を巧みに運転され、足代わりとなっている。どこを歩いても単車に乗った人が非常に多い。小さな島であり、また狭い路地が多いためここでは軽乗用車さえ持て余し、また自転車では坂道を上がれないため、単車が最適なのだろう。訪ねていてこの点が最も印象深く感じたことであった。



訪問日:2013.02.10 TOP 町並INDEX