贄川の郷愁風景

埼玉県荒川村<宿場町> 地図  <秩父市>
 
町並度 5 非俗化度 7 −秩父地方と甲州を結ぶ街道の宿駅−
 





贄川の町並


 秩父鉄道の西側の終点・三峰口は秩父盆地の西の端にあたり、近くの橋からは荒川の峻険な渓谷が見下ろせる。その橋を渡り、左岸の段丘上に贄川地区はある。
 『新編武蔵風土記稿』に、「此所ハ江戸ヨリ甲州ヘノ道筋ニテ左右ニ屋並ソロヒテ卅六
(36軒アリ。寛文七年ヨリ毎月二七ノ日ニ市立セシガ・・」と記録されている。秩父甲州往還の宿場であり、当時大宮郷と呼ばれていた秩父と甲州を結び、江戸と甲州の往来にも多く利用されていた。また上信方面への街路の分岐点ともなっていたため、物資の集散地ともなり在郷町的賑わいも見せ、絹・煙草・コウゾ・大豆・干柿などが名産であった。
 宿内には本陣・脇本陣が置かれ、多くの旅籠も存在した。また荷継業や渡船業も行われ、後者は荒川の渡船であった。深い渓谷が急に平野部に出る位置にあるため難所で、架橋しても増水によりすぐ流されるためで、川止めになることも多かったことから宿場町としての発達が促されたのではとも推測される。
 県道140号の新設により旧往還は残され、空地がやや目立つものの新しい家屋は少ない宿場町を思わせる家並が残っている。屋根がトタン葺となっているものが散見される点も特徴といえる。二階部分に木製欄干を残す家もあった。
 町並内には案内看板もあり、初めて訪ねた者にも解り易い。この地区または最近カカシの里として売り出しているようで、町角のあちこちにカカシ風の人形が置いてあるのを眼にした。歩いていてやや異質な感触を抱くが、地元の方々がこの町並の貴重さを認識されている結果と見るとほほえましいものであった。




訪問日:2018.06.08 TOP 町並INDEX