小さな郷愁風景〜石川県の風景〜


瀬越の風景 (加賀市)






 

 

 県南西部、福井県との境に近い瀬越地区は、加賀の藩米、九谷焼などの産物を積出した大聖寺川の河口港・塩屋の上流側に位置している。ここは名立たる北前船主が大勢拠点としたところであり、蝦夷地の交易にも乗り出していた。
 代表的なものに広海家、大家家などがある。残念ながら現在この集落で現存しているのはこの大家家だけである。広海家から養子に入った七三郎が炊(かしき・船乗りの一番下の働き手)から船主にまで駆け上って築いたという。最盛期には15艘の船を持ち200人の船員を抱え、広海家とともに日本海の百万長者と呼ばれた。
 現在の瀬越は非常に小さな集落で、その中に残る大家邸が博物館のようにも映る。商船が出入りし活況を極めていたとは到底想像できぬほど、人通りの無い静かな集落であった。

 (21.03.27)
「橋立・瀬越の郷愁風景」より分割掲載

 

 
 片山津の風景 (加賀市)
 

 

 

 

 

 片山津温泉は加賀温泉郷の中でも最大規模を誇り、柴山潟のほとりに大型旅館が建ち並んでいる。
 江戸初期にはその存在が知られていたが、源泉が水中にあるためになかなか活用できず、明治に入ってようやく地上に温泉を取出すことに成功した。
 発展が比較的後期になってからということと、戦後になって大規模に開発され湖岸に大型旅館・ホテルが林立したことで昔ながらの温泉街といった風情は余り感じることが出来ない。そんな中で異色なのが大正9年に建てられたという芸妓の検番で、この頃から歓楽的な色合いが濃厚であったことを示す建物である。
 

 (21.03.28)

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