小さな郷愁風景〜大分県の風景〜



天ヶ瀬温泉の風景 (日田市)










 筑後川の支流・玖珠川沿いに開ける天ヶ瀬温泉街。久大本線の駅もあり交通至便なところである一方、河原の露天風呂が名物であるように野趣に富んだ温泉地でもある。
 その歴史は古く、一説によると天武天皇の頃(7世紀後半)に地震による山崩れで温泉が湧出したともいわれ、江戸時代後半の頃には湯宿が集まっていたという。
 温泉街は一部に大型の観光旅館も見られるが、湯治宿を思わせるような小規模な旅館も眼につく。川沿いの一本道で、歩いていると常に玖珠川の川音が聞こえ、清涼感を味わいながらの町歩きとなる。

 (16.07.17)
生石港界隈の風景 (大分市)



 日豊本線の西大分駅付近は港湾地区で、生石村と呼ばれていた近世には定期的に市が開かれ賑わっていたという。浜の市と呼ばれたこの市により町筋が整えられ、後に市日限定ながら茶屋商売も許可され、芸子や遊女が別府や佐賀関、さらには大坂からも入り込んで商売を行ったという。
 そのような地盤だったので後に近代的な港が整備されると、船乗りや船客相手の商売として発達した。この地区の通称名から「かんたん遊郭」とも呼ばれ、売春防止法が施行されるまでが最もこの界隈が賑やかだったのだろう。
 現在でも二階に木製欄干が施された建物や、玄関口に特徴のある建物など往時の面影を持つ家々がわずかではあるが残る。一部には長屋風の建物もあった。 大分港の一角と言ってよいところで、周囲には洒落た感じの食事どころや海浜公園などもあり、地図を見ても周囲の町の風景からしても、このような家並は全く想像できないものである。

 (18.11.24)

蒲江の風景 (佐伯市)








 

 県の南東端に位置する蒲江の町。江戸期には佐伯藩のもと、鰯などの近海漁業が行われてきた。鰯は主に干鰯という肥料に加工され移出されていた。日向との境界あたりに好漁場があったため、漁業権を巡って紛争も少なからず発生したというが、明治以降は大型漁船の導入に伴って遠洋漁業も盛んに行われるようになった。
 小さな入江を取り囲むように家々が連なっている。北隣の米水津浦の漁村群と比べると町の規模が大きく、また町並風景も随分近代的なのは遠洋漁業による潤いによるものだろうか。裏路地に入ると伝統的な構えをした家々が散見される。そんな中で入江の南側から少し入った所には塀を巡らせた立派な邸宅が見られた。

(23.09.23)
 

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