小さな郷愁風景〜佐賀県の風景〜


鹿島の風景 (鹿島市)




 
 佐賀県の南部、有明海に面する鹿島市は17世紀初期に鍋島忠重が藩主としてこの地に居を構えたのが発端で、2万石ながら城下町が形成されていた。天守閣などは江戸も末期近くになって建てられたため、城郭としての歴史は短かったがそれ以後その敷地は学校として利用され、一部は緑豊かな公園として整備され現在に至る。
 城の南側の搦手門付近の坂道には現在でも武家屋敷の門が幾つか残っている。建築物から城下町の風情を嗅ぎ取ることができるのはこの坂道だけであるが、重厚な石垣の連なりや、またこの地方独特の「くど造り」の茅葺屋根を持つ民家も見られ、歴史を肌身で感じることの出来るいい散歩道であった。

 (05.07.17)


早津江の風景 (佐賀市川副町)
 

 

 



 
   
 筑後川下流部の分流・早津江川右岸に展開する早津江集落。藩政期には港町として発展したところである。
 五島・対馬方面の海産物や佐賀・福岡の農産物が集散するところで商港が発達、米蔵や魚類の問屋が建ち並んでいたという。
 また文久期には海軍伝習所が設置されており、日本海軍発祥の地としても知られている。
 川の自然堤防上に発達した集落で、国道も離れた所に建設されたため町割は残り往時のままの狭い街路に沿い家々が並んでいるが、伝統的な建物はあまり見られない。しかしその中で切妻の妻部を街路に面した大柄な旧家が目を引いた。二階部の鉄板蓋を持つ矩形の窓、二段の軒庇など九州北部で多く見られる妻入り商家の典型的な姿であったが、無住となって久しいらしく傷みが激しかった。この建物が失われると、もはや古くからの商港であったことを町並からうかがい知ることは難しくなるやに思われた。

 (21.01.04)

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