小さな郷愁風景〜東京都の風景〜


東京大学構内の風景 (文京区)








 東京大学は我国の最高学府であることはいうまでもないが、それが都内のどの位置にあるのかは、関係者や地元以外の方は意外と知られていないのかもしれない。上野公園の西側に張り出した本郷台地(武蔵野台地の東端)上に構えるその敷地内には、一部の学部を除いた各棟が緑豊かな中に並んでいる。有名大学であること以外に、ここを訪ねる一般観光客も多いのは、建物自体に歴史性が感じられ、古い町並といってもよいほどの風景が展開するからでもあろう。中でも最も有名な安田講堂(T14)は、前面に広い空間を従え、圧倒的な存在感を示している。現在は現役の校舎としては利用されていないようで、時々公開される程度というが、保存に値する洋風建築である。

 (06.11.05)
 


神田界隈の風景 (千代田区)



 東京駅にも近い神田界隈は、戦時の空襲を免れた地域が広く存在しており、意外にも戦前の姿が現在にまで残っている。神田須田町、神田多町付近を中心として色濃く残り、特徴的な銅板に被われた家屋、一部には出桁の木造建築や洋風建築も見られる。都心部に位置することから現代の建物に駆逐され、無論古い町並といえるものではないが、散在するそれら戦前の建物は極めて貴重といえよう。もはや保存に値するほどの密度で残っていないのが残念ではある。
 明治13年創業の「薮蕎麦」やあんこう鍋の老舗が古い構えのまま営業されている姿も印象的だ。

 (04.10.11・07.05.26)
 


荒木町の風景 (新宿区)





 

 新宿区荒木町付近は複雑な武蔵野台地末端の地形を象徴するものとなっている。北側から外苑東通りを辿ってくるとそれが顕著に感じられ、谷間をまたぐ曙橋から南は細い尾根筋となっている。荒木町はその東側、土地が一段と窪んだ場所に位置している。面白いことに四方を全て急坂に囲まれた地形だ。この擂鉢状の一角はさすがに抜本的な都市開発が行われてこなかったのだろう、独特の町並風景が展開している。
 明治の頃より花街として大きな発展をみたところで、今でも格式・趣のある小規模な料亭街として受継がれている。一部では遊里の面影を残すものも見られる。
 谷間の町に降りるそのアプローチも石段や階段状の石畳など情緒が感じられ、また他の地域との隔絶感を強めている。特異な町の風景といえよう。

 (09.05.30)
 

戻る