筑後草野の郷愁風景

福岡県久留米市<宿場町・農村集落> 地図 
 町並度 4 非俗化度 6  −日田往来の牧歌的な雰囲気の残る宿場街−




 


 
 

 

旧日田街道沿いの町並 


 草野地区をはじめとする久留米市東部、南に控える耳納山の麓は、古代から文化が栄え、古墳や山城跡、寺社なども多く、それらを結ぶ「歴史と文化の道」が整備されハイキングをする客も多い。南に広々と筑後平野を従え、いかにも温暖そうで自然も豊かである。
 一方、草野は豊後街道(日田往還)の宿駅としての歴史も持つ。城下町の入口となる西側の御井、東側の吉井の中間の宿である。国道は北側の平野部を通っているので現在でも道幅は往時のままで、宿場独特の鍵曲がりも残り、街道集落らしい家並を残している。旅籠ばかりでなく在郷町としても発展し、最盛期には30種以上の職業の民家が並んでいたといわれている。この地区の西外れに櫨(はぜ)並木が残っているのは、この地区で櫨の実を原料とする和ロウソクの生産も盛んだったからである。
 現在残る町並はほぼ旧街道沿いに展開している。一般に街道沿いの宿駅集落は間口の狭い町家が密集していることが多いものだが、ここは土地に余裕があったためか、または間口により徴税額が決められていた都市的な制度がなかったのか、ゆとりのある牧歌的とも言える家並になっている。主な町家は、醤油業などで栄えた鹿毛家住宅、19世紀半ばの建築と見られる上野家住宅などであるが、それらの家々は、家並として統一した様式ではなく、多彩な建築様式が混在していた。これは多彩な職種が混在していた在郷町の特色を表しているようだ。また洋風の外観を持つ建物も複数見られ、宿駅制度が終了してからも地域の中心として位置づけられていたであろうことがわかる。
 街道上の町並から少し西に向かったところにある矢作地区にも特徴ある集落風景が見られる。街道から山裾に向かう道筋に沿い石垣に囲まれた家々は武家屋敷風に長屋門を備えたもの、広い中庭を有するものなどが見られる。この地区の産業の要・農業で財を築いた家々がこしらえた屋敷群なのだろう。街道集沿いとはまったく趣の異なる風景が展開していた。
 



 
矢作地区の町並

2021.01再訪問時撮影     旧ページ

訪問日:2003.03.23
2021.01.03再訪問
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