豊浜の郷愁風景

愛知県南知多町【漁村・港町】 地図
 町並度 4 非俗化度 10 −国道の裏手に残る板壁の路地風景−
 





 知多半島のほぼ先端に位置する豊浜の町は現在は南知多町の一部であるが、昭和36年までは独立した自治体であった。南知多町の役場はここに置かれ、郡部としてはやや大きな市街地が展開している。
 古くから港として大きく栄えたところで、それは半円形に入組んだ湾が外洋からの波を防いでくれることが大きかった。江戸と大坂を往復する緒船もここに寄港することが多かったという。また漁業も盛んで、伊勢湾漁業の中心として賑わいを呈していた。
 国道が湾を取囲むように走り、主にその山側が古い町のようだ。国道の一部にも古い建物がせり出してきているが、一筋入ると一転して静けさが支配し、土蔵や町家風の旧家、塀に囲まれた屋敷などが視界に入ってくる。それらは板壁に被われ、落着きと重厚さを渋く発しており、主に細い路地に展開することから迫力も感じられる。
 国道より先が古くは海で、この古い町並のある付近が漁港に沿ったかつての漁師町だったのかと思わせる。しかし、敷地の広い邸宅も見られることから、経済的にも豊かな集落であったことが想像できる。
 水揚された魚を運ぶための浅い木箱が玄関先に干されていたり積上げられている風景を見ると、やはりここは今でも漁村なのだと感じさせる。
 


豊浜の町並




 板壁に被われた路地が展開する


 明治期には漁網商が立地し、多方面に販売されていたという。一角に見えた幅の広い木造建築は或いはそういった工場の名残なのだろうか。
 近年では蜜柑狩りや潮干狩り、そして海水浴などに訪れる客が多く、また活魚料理を供する旅館や施設を目当てにする日帰り客も増えている。しかし一方で、保存するほどの質と量でないのがもはや残念であるが、この町の本来の姿は消えることなく残っていてほしいものだ。




これは元工場の建物か

訪問日:2008.03.13 TOP 町並INDEX