上板井原の郷愁風景

鳥取県智頭町<山村集落> 地図
 
町並(集落景観)度 4 非俗化度 3 −雪深い山奥の農村集落−










上板井原の町並


 藩政時代に山陰と山陽を結ぶ街道に沿い、宿駅が設けられていた智頭の町並。杉の良材に恵まれ林業の町として栄え、家並は木材を豪勢に使用した外観が目立つ。裕福な町だったのだろう。
 その杉材を豊かに産する背後の山の奥深くにこの上板井原集落がある。宿場の町並の北端付近に集落への案内板があり、そこからやや細い道をどんどん登っていく。かなりの急坂が続き眼下の平地がどんどん低くなっていく。なるほど杉の美林が続く。
 トンネルを抜け流れに沿う細い谷間に出ると板井原地区である。この川は北隣の用瀬町域に流れ込むため、トンネルなき時代にはこの川を遡ってくるか、高い峠を越えてようやくたどり着いていたこの集落も、今では智頭市街から10分ほどである。
 しかしここは雪深い山中、冬場はほとんどの住民は里に降り、春先から秋までの集落であり、僅かに残る家々も、集落としての存続が覚束ないほどになっているという。
 集落を流れる川の水は清冽で、上流に一切の集落を持たないので汚れを知らない。集落を構成する家々は、雪深い地を反映してかトタン屋根の簡素な民家、茅葺の家、そして赤瓦を葺き煙出しを備えた大柄な家屋等、様々な形態が見られるが、集落内は舗装路はなく全て地道であり、家々の間には小さな畑地が展開している全くの山村である。
 智頭町では、このともすると廃村にもなりかねないような山村を甦らせようと、工芸村などという名目で再生事業に取組んでいる。古びた民家を茶店に改装し、アトリエを設けたりして、何とか活性化しようとする試みを続けている。歩いていると地元の方の姿はほとんど眼にすることなく、若い人を含めたそれら喫茶店などに出入りする客の姿が目立った。集落として存続してほしいという思いは強く抱くが、本来の姿が既に抜け殻のようになっている感も否めなかった。
 






集落内は全てこのような地道が細々と伸びているだけである。
訪問日:2006.07.30 TOP 町並INDEX