大山寺門前の郷愁風景

鳥取県大山町【門前町】 地図  
 
町並度 3 非俗化度 6 −大山寺の門前街−
 

 霊峰大山は伯耆地方のほぼどこからでもその姿を見ることが出来、古くから崇め高められてきたのがよく分かる山容である。
 平安期には早くも山岳仏教の聖地として位置づけられ、大山寺は僧兵を抱え政治的権力をもつまでになった。藩政時代も大山寺領という独自の領地支配を行っていた。
 
 大山寺本堂(2020年撮影)  
 



 
参道の町並 
 



 
 宿坊通り入口付近  参道沿いの旅館  
 



 
 宿坊通りの風景 
 

 詳しい歴史は省略するが、大山寺付近は信仰の中心だけではなく商業の拠点としても賑わいを見せていた。現在大山寺参道入口付近に広い駐車場があるが、何しろこの場所はかつて博労座と呼ばれる牛馬市が行われたところで、各地から持ち込まれた牛や馬でひしめいていたという。今でも大山への道がここで収斂するような形となっており、それだけでいかに賑わっていただろうかということがわかる。大山道と呼ばれる街路は山麓のあちこちにあるが、全てこの大山寺門前を目指したものである。
 駐車場付近から真っすぐに坂道の参道が伸び、土産物屋や旅館が並んでいる。その脇道の一つに宿坊通りと呼ばれている小路がある。すこし奥まった位置に、もと茅葺らしい立上りの高い屋根を持つ建物、曲り屋のような構造の建物などが見られ厳かだ。しかし、宿坊街というほど宿が多数あるわけではなく、また営業されていないものも複数あるようで賑わいは感じられない。
 参道を登っていくと次第に店舗も少なくなり、緑濃い深山の趣になる。そんな中に旅館建物が見られるも、廃業されて傷んでいる様子が見え寂れたさまは拭えない。1軒だけ営業している元宿坊の旅館が立派な構えを残しながら孤軍奮闘しているようであった。
 旅館に泊った翌朝、参道には大山登頂を目指す登山客の姿が多く目についたが、はるばる街道を辿ってやってきた多数の参拝客や牛馬市などで賑わった過去があることを思うと、やはり寂しさが感じられる。
 


訪問日:2025.07.05・06 TOP 町並INDEX