吉田の郷愁風景

新潟県吉田町【在郷町】 地図 <燕市>
 
町並度 6 非俗化度 8 −信濃川の水運を要として発達した商業町−
 


吉田中町の町並


 
吉田町は越後平野のほぼ中央部の低平な土地に展開している。越後線と弥彦線の分岐駅となっており、道路交通も新潟・柏崎方面への国道116号から三条方面へ同289号が分岐する。
 江戸前期には既に町立てされ、1・6の付く日には六斎市と呼ばれる市が開かれた。長岡藩の役所や郷蔵なども置かれ、近隣の政治や商業の中心として発達した。これは信濃川に通じていた西川の水運の恩恵によるところが大きい。西川はかつて西信濃川とも呼ばれ、本流とともに周囲に氾濫原や沼沢地をもたらした。治水そして悪水の排水が当時の大きな課題だったが、自然堤防の微高地が形成されていたこの付近の西川右岸は比較的安定した土地であり、町を置くに適したところであった。
 商いをする者も多くあらわれ、中でも今井家は豪商として知られた。近江出身の今井氏はこの地で大地主となり、金融業、醸造業へと手を広げた。中でも現在でも町並の一角にその姿を残す旧今井銀行の建物は明治33年建築、今井氏が個人で経営したもので、数千人とも数えられた小作人の財産を管理・掌握し、今井銀行に貯金することが小作契約を締結する条件とされていたものであった。母屋を挟んでは客の応対などに利用された煉瓦建築(香林堂)も街路に面して残り、今井家自身が町並の景観に貢献している。
 この今井家のある付近は下町で、そこから西に向い中町・上町・新町と町場が連続している。中町から上町にかけては商店街となっている。元々は雁木が連なっていたと思われるが、現在では鋼鉄製のアーケードに取って代わっている部分も多い。しかし、商店を構成する建物には伝統的な造りのものも少なくないため、古い町並としての体裁は十分に保たれている。多くは妻入りで、二階部分の梁組を表に出した真壁、商店らしく開放的な構造の1階部が特徴である。一部では妻入り屋根が多数連続したリズミカルな町並風景を見る事もできる。
 地元は登録有形文化財となっている今井家以外は建物や町並としては認識されていない様子で、アーケードの下を歩くと平凡な地方の商店街にも映る。しかし少し工夫をすれば伝統的な建物や町並としての魅力を引き出すことは十分可能と思われる。商店街の建物にも動きが波及することを期待したいものだ。
 




吉田下町の町並 右は旧今井銀行の建物




吉田新町の町並




吉田上町の町並 吉田大保町の町並

訪問日:2017.04.29 TOP 町並INDEX