江迎の郷愁風景

長崎県江迎町【宿場町】 地図 <佐世保市>
 
町並度 4 非俗化度 7  −清酒本陣のある街道町−





 江迎町は県の北部、海岸線が複雑に入組んだ湾の最奥に町の中心があり、旧国鉄松浦線の松浦鉄道と、国道204号線が町を縦断し佐世保方面と平戸方面とを結んでいる。山がちの地形であるが中心地付近は狭い平地もあり、古くからの官道平戸街道の通過する町であった。
江迎町長坂免の町並




清酒本陣と呼ばれた江迎宿本陣




 


 藩政期には平戸藩に属し、異国船の出入が盛んであった地域でもあり、中でも長崎の警備を重視した藩は長崎との往来を頻繁に行った。そのため江迎には藩主の宿泊施設が必要となり、清酒本陣と呼ばれた山下家がその代表である。参勤交代の折にも必ず利用があったといわれ、平戸藩主は長崎への往路第一夜、そして復路の最終夜ここに休泊したとされ、それにふさわしい厳かで豪華な造りであった。6つの広間を持ち、庭には水琴窟もあり現存しているという。清酒本陣と呼ばれるのは代々この家が酒造業を営んできたからで、今でも潜竜酒造として営業されている。平戸藩主松浦氏により天保元(1830)年に整備拡充された当時そのままであり、威風堂々たる外観を保っている。
 深い入江の奥、そして複雑な地形の北松浦郡の中心に位置していたこともあり、藩主の通行のみならず交通の要衝となり、また近隣の物資も自然とここに集まった。平戸と佐世保を結ぶ中継点として、地域の中核として重要な位置にあり、町場は古くから発達した。また近隣で盛んに生産された石炭も江迎の経済を潤すものであった。
 明治以降には馬車交通がいち早く佐世保や平戸口などを結んだほか、国鉄松浦線の開通により一大拠点としての役割は続いた。石炭業の衰退により一時活気は失われたものの、農業への転換もあり今町を歩いても町からは活気が感じられる。
 本陣の建物以外は古い町並として連続した風景は乏しいものの、旧街道らしい佇まいは残し、また本陣の存在だけでも訪ねる価値のあるところである。
 



訪問日:2010.08.15 TOP 町並INDEX