上条の郷愁風景

山梨県塩山市【山村集落】 地図 <甲州市>
 町並度 5 非俗化度 8 −山裾に展開する養蚕に特化した民家群−

 




突上げ屋根を持つ家屋が多く見られる上条集落の風景
 

 塩山の市街地から北東5kmほどの山裾に展開する下小田原地区。地区の北部、舌状に張出した緩やかな台地状にここで紹介する上条集落はある。この集落はこの地方独特の養蚕民家などが周囲の自然と一体となった景観が評価され、2015年に重要伝統的建造物群保存地区に指定された。 
 明治初期までは下小田原村として独立した村で、江戸期は多くの時期が幕府領であった。この地域は古くから養蚕が盛んで、家屋の構造もそれに即した姿となっている。甲府盆地東部一帯は切妻の茅葺屋根を持つ建物が多く残るが、とりわけ主屋の中央部に凸部を持つ「突き上げ屋根」が一番の特徴といえるだろう。中二階となっており蚕室として使われた場所で、高い立ち上がりから豪壮な商家といった印象を抱く。増産のために別棟を建てた例もあるという。
 なだらかな斜面に突き上げ屋根を持つ民家が散在的に見られる。茅葺のままのものは少なく多くはトタンに覆われているものの、近くで見ると風格を感じさせる。玄関と突上げ屋根の位置は一致していないのが特徴で、内部の構造がどうなっているのか、外向きに公開された家屋はないので確認することは出来なかった。
 市によって駐車場や案内看板などが整備され、初めて訪れる人も迷うことはない。歩いているとやはり建物だけでなく石垣や生垣、果物畑などと一体化した風景が魅力的に感じた。
 また福蔵院、観音堂など寺社が多いのも特徴で、そこからも歴史と信仰の深い集落であることがうかがえる。
 
 









訪問日:2018.09.22 TOP 町並INDEX