黄海の郷愁風景

岩手県藤沢町<商業町・川港町> 地図 <一関市>
町並度 5 非俗化度 10  −北上川の支流沿いに商工業が発達−




妻入り商家の連なりも見られる黄海の町並
 

 
 藤沢町黄海は北上川の支流・黄海川沿いの比較的平坦な土地に位置している。付近は田園地帯と丘陵が交錯している。少々風変わりな地名は古代付近にあった湖水の色にちなむ説、アイヌ語に由来する説、坂上田村麻呂が北上川の洪水を見、黄海郷と名づけたという説など種々ある。
 藩政時代は仙台藩領に属した。北上川本流に近い七日町と東側の二日町の町場があり、前者は北上川の河岸・川港として発達、後者は南側の登米から北上川沿いの平野部を縫い今の江刺にあたる岩屋堂に至る街道が通り、その往来によっても繁栄した。
 煙草・紅花などを産物とし、二日町には二・一二・二二日と月三度の市が立ち、北上川と街道の陸運を得て賑わった。周囲の山林では炭焼が盛んに行われていたほか、特異なものとして石灰の生産があった。付近の山は石灰岩が分布しており、採掘し消石灰として染屋などに販売された。最盛期の文政11(1828)年には307俵の販売量を記録している。商圏は仙台藩領を中心に北は黒沢尻(現北上市)から郡山付近までの広範囲に及んでいた。
 主に二日市地区に古い町並らしい姿が残っている。妻入りの大柄な家屋が連なった一角もあり、商業で栄えたらしい姿を伝えていた。一階部分が全面サッシ窓となっている建物が多いのは店舗だった名残だろう。今は歩いていても地元の人々の姿もほとんど見ることのない寂しい雰囲気であったが、かつては多くの人が往来し賑わいの中心だったのだろう。スレート葺の屋根を持つ元郵便局らしい建物もあった。
 ここは付近の町を訪ねるにあたり経路を検討していて偶然見つけたところであり、予想外の町並を見た思いだった。

 




 



 
   

訪問日:2022.07.17 TOP 町並INDEX