藤白の郷愁風景

和歌山県海南市【港町・商業町】 地図
 町並度 6 非俗化度 8 −工業地帯を控え熊野街道沿いに残る港町−




藤白の町並


 藤白地区は海南市街地の南部の一角を占め、海岸部は工業地帯となり、また高速道のインターチェンジも付近にある。
 一方で幹線道路と紀勢本線との間に封じられたように残る古い町並がある。










 
 

 地名としての歴史は古く古代から見られ、地内に熊野街道が縦断していたことから中世にかけて熊野参拝客の宿駅的な役割を担っていたこともあるという。
 江戸期に入ると俄然港町としての要素を強く帯びてきた。江戸初期の記録では加子役数(藩に納める年貢米に換算した水夫の数)25(=納米14石相当)であり、廻船問屋や船主宅が多く集結し、港を形成していた。
 また和歌山藩主の商人により塩田開発も早期から行われており、商家も立地したのだろう。
 塩田であった地区は後に幹線道路や新市街地として利用され、さらに沖に向けて埋立てが行われ工業地帯が形成されたであろうことが地図との関連で想像できる。陸封されたような熊野街道沿いの地区は、もともとは海岸に直接面していたに違いない。そういう眼で歩くと、町並から潮の香りが漂ってくるようでもある。
 所々に熊野街道を示すささやかな標識があり、屈曲を繰返しながら古い佇まいが続く。古い町並としてまとまりのある景観で、町歩きを趣深いものにしてくれる。南端付近に造り酒屋が鎮座し、町並景観のポイントとなっている。1階正面に木製の酒樽を埋めこんだ姿が印象的で、狭い路地にあって珠玉の風景を醸し出している。平入り切妻・塗屋造りの町家も目立ち、港町や漁村というよりも商業を基盤とした町を思わせる。
 歩いてみると熊野街道に沿い数箇所ある枡形がアイストップとなり、次に現れる町並への期待感を抱かせることが、町並の質量以上に高い印象を与える。
 
 


    
訪問日:2011.08.04 TOP 町並INDEX