猪崎の郷愁風景

京都府福知山市【花街・住宅地】 地図
町並度 5 非俗化度 8 −市街地と川を挟んで対峙するかつての遊興地−

遊興地独特の外観を示す建物の残る猪崎の町並


 福知山市の市街地は由良川の左岸地区に展開し、この猪崎地区は対岸の右岸側にある。市街地側とは異なり背後に丘陵が迫っており、住宅地の半分は坂道に展開している。
 丘陵上は歴史深いところで、中世に城が築かれていたほか、麓は古戦場ともなった。由良川を挟んで盆地を見渡せるところであり、地図を見ても城を構えるにふさわしい場所ではある。
 猪崎の町並的な特徴はかつての遊郭を象徴するような外観の建物が複数残っている点である。玄関部分にアーチ状の屋根を載せているものがあると思えば、或るものは2階部分に木製の欄干が設置されており、肌理細やかな出格子に眼を奪われる。
 明治中期からここは遊興の地としてそれらの建物が並び、折しも軍の施設が福知山に置かれたこともあって一大繁華街として賑わったという。明治末期には娼妓200人を抱えるほどであった。
 町の歴史的性格上、表立って紹介されることも少ないのだろうが、この猪崎町の町並はそれを非常に色濃く現在に残していて、単純に町並としても見ごたえのあるものである。多くは現代の一般住宅になっているものの、それとの対比が強調されて却って異質感を強めているようだ。
 丘陵地には長屋門を従えた豪農らしい邸宅も見られ、意外な立体感と奥行のある町並が残されていた。













訪問日:2012.04.29 TOP 町並INDEX