船引上移の郷愁風景

福島県船引町<在郷町・街道集落> 地図  <田村市>
 
町並度 5 非俗化度 9  −中通りと浜通りを結ぶ街道沿いに商業が集積−



 
 

 重厚な商家建築も見られる船引町上移の町並
 

  船引町は県の中央部、郡山の市街地から東へ20kmほどの位置にあり、磐越東線、磐越自動車道により交通の便は良い。
 船引町の中心には残念ながら古い町並として際立ったものはなく、ここで紹介するのは町の中心から北東に離れた上移という集落である。県道50号沿い、葛尾村との境界に近い位置にある。
 阿武隈高地は起伏の少ない穏やかな山並が続くが、町や集落のある辺りの標高は意外と高く、この付近も450mほどある。その割には集落周囲は比較的平坦な地形で、耕作地帯となっている。
 上宇津志村とも書き、阿武隈川支流の移川沿いに位置する。浜通りの相馬とを結ぶ街道が通り、正保2(1645)年の記録によれば家屋226軒に519名の人口を有しており、茶屋が3軒あった。「天保郷帳」では、街道沿いに町と称する町場が形成されており、相馬・二本松両藩からの米穀類、鉄、塩、五十集物(いさばもの・魚の塩漬や干物を指す)、茶や繭などが扱われた。町には下庄屋・上庄屋の二軒の庄屋をはじめ、在郷商人も多く台頭し、近隣の商業中心地となった。
 町の中心からは離れた位置にあることもあり、かなり大きな町場という印象を抱く。家々の間口は広く、やはり街道集落と言うより在郷商業町として商家を思わせる構えが多い。街路に面して母屋と土蔵が並んでいる姿も目立つ。
 トタンに覆われた屋根はもと茅葺なのだろうか。中には兜造りのような形状を持つものもあった。
   
 



 
 



 
  新旧郵便局の建物が並ぶ風景 
   

訪問日:2023.04.01 TOP 町並INDEX