箕輪の郷愁風景

群馬県新治村【農村集落】 地図 <みなかみ町>
 
町並度 6 非俗化度 10 −養蚕農家の織成す代表的集落−


 上州では江戸の昔より養蚕・製糸業が非常に盛んに行われており、山間部では蚕を飼育しその繭(蛹)を得る養蚕農家が多く立地し、前橋や高崎周辺ではそれを受けて製糸業が発達、桐生や伊勢崎などでは絹織物業が興り、それらは利根川水系の舟運を経て江戸へ運ばれていた。
新治村布施(字箕輪)の町並
新治村布施(字箕輪)の町並


 特に横浜の開港後は繊維の需要が激増したこともあり養蚕大国となり、有名な官営富岡製糸場など象徴する施設も今に残っている。大規模な工場施設だけではなく、山間部を中心に独特のつくりをした養蚕農家が多く残り、独特の集落景観を示しているものも多い。ここで紹介するのは代表的な養蚕集落の一つ・新治村役場裏に位置する箕輪集落である。
 村役場や国道近くに存在しているにも関わらず濃厚で強烈ともいえる集落風景を示していた。田園地帯から小高い山を回りこむ農道を抜けると、突然のように視界が開け村落全体が見渡せるその演出も心憎い。それだけに印象度は強いものがある。
 最も特徴的なのが屋根に飛び出た気抜きの小屋根だが、元茅葺と思われるトタンに被われた兜屋根を持つ家屋、土壁むき出しの土蔵などが特筆され、周囲を山に囲まれ遮蔽性が高いこともあるからか、一種別世界的ともいえるような集落の広がりを感じさせる。
 この地域の養蚕民家の構造的特徴に三階建や軒せがいなどがある。いずれも養蚕室を極力広く取るための工夫であるが、上層階がせり出したようなその外観は迫力を感じさせる。妻部が真壁という梁を壁面に表した造りとなっていることもその特徴を際立たせており、それらが町並といえるほど密度濃く寄り固まって連なっていることで、尚一層の特異性が感じられる。
 もちろん商家の連なる都市型の古い町並とは趣は大きく異なり、通りに面するのは家々の玄関ではなく土蔵や伸びやかな庭であり、奥まった位置に主屋が配されている光景は、養蚕業でかなり潤ったであろうことが容易に想像できる。この箕輪集落では昭和60年頃まで養蚕が行われていたらしい。多くの建物は明治中期建築のものだそうだが、近年まで現役であっただけに活き活きとした息吹がこの集落からは感じられるようだ。
 









訪問日:2008.10.13 TOP 町並INDEX