日比原の郷愁風景

高知県吾北村<商業町> 地図  <いの町>
 
町並度 5 非俗化度 10  −袋小路のような谷奥に展開する集落−


日比原集落 数軒の店舗が見られる
 

 日比原地区は太平洋に注ぐ仁淀川水系・枝川川の上流域に位置し、弓形の県域の中央というか北部というか、いずれにせよ山深い土地である。
 古くは清水村と呼ばれるところで、日比原の地名は清水村の小村との位置づけであった。天正18年の地検帳に「ヒゝ原村」とあるのが初見か。寛保3年の郷村帳によると戸数300・人数1,710で、小村集合での数とはいえ多くの人口を有していた。
 

 

 現役の旅館  
 

 



 谷間の袋小路のようなところで耕地が乏しく、産業は主に林業に依っていた。その中にありこの日比原地区は物資搬出の要衝にあたっており、商業も発達した。明治5年には郵便局が開設、楮1万9000円余、木炭1万5000円弱などの物産があり、また酒などの醸造業も行われていた。小さいながらも商店が並び、周辺山村の物資供給地となっていたようだ。
 すぐ北側には吉野川水系との境をなす険しい山峰が連なっており、集落付近の標高は200m余りではあるが非常に山深いところとの印象を抱く。国道から一本谷側に残る旧道に沿い家並が連なっていた。集落が発達するところとしては険しく、街路に面しては平屋や二階建てであっても、川の方向から見ると二階屋・三階屋と一段高くなっている建物も多い。中でも橋のたもとから見える崖にしがみついたような外観の建物はこの集落を象徴するようであり、情報によると路線バスの車庫として使われていたとのことだ。
 歩いていると今も店として商売されているわずかな御宅以外にも、もと店舗らしく1階部分が開放的なつくりになっている家々が多く、賑わいのあるところだったのだろう。また「御旅館」の看板を掲げた建物も見られ、こちらは現場関係者などの需要があるらしく現役のようであった。
 小さな集落ではあるが、狭い土地を克服しようとする家々の形、そしてかつての賑わいが伝わってくる点で印象度は強いものがあった。
 
 



 
狭い土地を克服する苦心の跡が見られる 右はかつてバス車庫として使われていたと云う 


訪問日:2014.05.05 TOP 町並INDEX