野原の郷愁風景

奈良県五條市<街道集落・在郷町> 地図 
 町並度 6 非俗化度 9  −二本の街道が交差する交通の要衝−









野原西四丁目 一部に連続した商家群が残る  


 五條市野原地区は市の中心市街地とは吉野川を挟んで反対側となる。もと川の氾濫原、現在は流れがやや蛇行した内側の位置にあり、付近には野球で有名な智弁学園などもある。
 江戸から昭和戦後しばらくまで野原村(町)という独立した自治体で、江戸時代は旗本上条氏領。現在の和歌山県橋本市付近から当地を通り吉野方面とを結ぶ河南街道と、十津川方面に向う西熊野街道の交差する位置にあり、この辻辺りを中心に家々が集まったのだろう。交通の要衝として宿屋や商店が連なり、奥吉野の玄関として大きくにぎわった。
 明治15年の記録では専業の商家が31名、工業に携わる者12名とあり、米、麦、酒、醤油、油、白木綿などが取引されていた。また大正に入ると吉野川流域で盛んになった桑栽培により養蚕業も発達し、養蚕組合も発足した。
 市街中心方面から国道168号で吉野川を渡り、野原西一丁目交差点から右に折れる街路沿いと、その中間付近から東に派生するやや細い街路に沿い古い町並が見られる。その交差点が西熊野街道と河南街道が交わるところだったのだろう。特に前者に沿っては、間口の広い堂々とした商家が散見され、虫籠窓や袖壁などこの地方に標準的な町家の意匠が見られる。現役として営業を続ける店舗も多く、比較的活気が感じられる。
 保存地区となっている新町界隈に隠れてか、全く着目されることのない町並であるが、注目されるだけの価値は感じられる。
 
 
野原西四丁目の町並 野原西二丁目の町並 


訪問日:2016.09.11 TOP 町並INDEX