名柄の郷愁風景

奈良県御所市【街道集落・在郷町】 地図
 
町並度 6 非俗化度 7  −葛城山地の東麓に牧歌的に連なる古い町並−





 大和盆地の南端を占める御所市には、市街地だけではなく郊外にも伝統的な町家の多く見られる場所がある。この名柄集落は歴史的にはむしろ現在の御所市街より歴史が古いとも言え、地名は古代大和期より見られる。
 その頃は金剛山に登る人のための宿場として栄えていたとされ、また地名表記も当初は長江であったものが読みの同じ柄の文字が当てられ、さらに名の文字があてがわれたと推測される。町の中央にある神社は長柄神社と表記される。
 付近は葛城山地の麓で、土地はなだらかに西から東に向い傾斜しており、広々とした自然を感じさせる。盆地の中心部とは随分趣が違う。そして漸く車の離合が可能なほどの細道に沿い、伝統的な町家建築が随所に残り、古い町並を形成していた。
 この南北の街路は旧高野街道で、長柄神社付近で交わる東西の道は水越峠を越えて南河内へとつながる道であった。二つの街道の交わる辻を要に、古くから町が発達していたらしい。
 それを象徴するのが慶長年間には存在していたという中村家で、本瓦を載せた重厚な造りは400年もの永きにわたりこの町並の筆頭家屋であり続けた。当時代官屋敷であったといい、国の重文に指定されている。
名柄の町並 右は中村家(国重文)










 


 近代になると新しい御所市街地やその他各地のほうが栄えていったのだろうが、この名柄にはその遥か以前から町家が並び商業が栄えていたらしい雰囲気が濃厚に感じられる。残っている町家はいずれも江戸期まで遡るような特徴を残していることもそれを表している。中二階の立ち上りは低く、虫籠窓は瓜型または楕円形が多い。これらは大和一帯で盛んであった綿花や菜種などを商い、人の往来の多い街道沿いにあったことから格式ある商家に成長した。
 鉄道からも幹線国道からも外れたことからこのような古い建物が多く残っているのだろう。旧家の連なりを今後も意識して残していってもらいたいものだ。


訪問日:2008.07.20 TOP 町並INDEX