御所の郷愁風景

奈良県御所市<商業都市> 地図
 
町並度 8 非俗化度 8  −大和盆地南部の歴史ある商都−
 大和盆地南部、西は大阪府、南は五條市に接するところに御所市はある。今は人口三万余りの小さな地方都市であるが、かつてはこの地区随一の商業都市であった。降水量の少ない盆地の気候から稲より綿の栽培が盛んであり、そこから発展した大和絣の生産の中心であった。また、この地域は富山と並んで古くから製薬・売薬商の盛んな地であったが、その多くが御所、大和高田を拠点としていた。


西御所の町並






西御所の町並




西御所の町並




東御所の町並



東御所の町並★



 町は葛城川を挟み大きく西御所・東御所といわれる。町の成因は余り定かではないが、城下町に由来する説が有力で、東御所はこの地区の中心にある円照寺の寺内町であったとも言われる。確かに東御所にはその名の通り寺内町という町名が残り、寺を中心とした自治行政が行われていたのかもしれない。
 町並の雰囲気は両者ともそれほど大きな違いはない。つし二階造りで袖壁を設け、それには見事な彫刻や家紋があしらわれているものが多く見応えがあった。虫籠窓も矩形の細長いものや、楕円型でごく小さい漆喰で塗り込められていないもの、変形型で中の格子模様に遊び心が見受けられるものなど多くの種類があり、最初は通風・防犯の役割から次第に装飾の意味合いを深めていった様子が伺え面白い。古い町並は面的な広がりを見せ、辻を曲ると新たな町家が次々と現れてくる。歩くほどに、その規模の大きさを感じさせる。
 御所の古い町並は、重要伝統的建造物群保存地区に匹敵する質と量を誇り、散策客が多く訪れ注目されてもおかしくない。しかし家並には外部の眼を意識した色は全くなく、住民は普段通りの生活をしている。このような町並は今や稀少価値のあるものとなった。知る人ぞ知る、取って置きの町並であり続けてほしいものだ。




2008.07再訪問時撮影(★:2002.10撮影)
訪問日:2002.10.14
(2008.07.21再取材)
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