跡市の郷愁風景

島根県江津市<在郷町> 地図
 
町並度 4 非俗化度 10  −山間部に残る素朴で渋い町並−




跡市町の町並


 江津市跡市町は市域の南西部、西に3kmほどのところに渋い温泉場が展開する有福温泉がある。幹線国道からはずれ、現在では山間部の小さな集落に過ぎない。跡市という地名からも既に過去のものとなったような感触を抱くものだが、小さいながらも無住の家屋は少なく、木造の伝統的な建物を持つ小学校も現役である。
 もっとも中世は阿刀と表記されていたことでその宛て字であろうから、寂れた土地というわけではないらしい。江戸時代になると跡市組と呼ばれる自治組織が組まれ、浜田藩の代官所が設置されていた。町場の形成は古く、中国山地一帯で盛んだった牛馬市の拠点として賑わい、明治初年の記録にも人工1600人余りを擁し商家・工人39戸など商業町の様相をしめしていた。また周囲の山林の豊かな資源を利用した楮、櫨、そして麻や桐油などの産業もあった。近くに有福温泉を控えていたことから湯治客による貢献も少なくなかったと思われる。




 

用のない限り通過点にもならないような内陸にありながら、今なおかつての賑わいを思わせる集落風景が展開している姿は在郷町としての蓄積が大きかったことによるのだろう。
跡市小学校 現役の木造建築だ
訪問日:2012.04.01 TOP 町並INDEX