川島の郷愁風景

山口県萩市【城下町】 地図
 
町並度 6 非俗化度 4 −萩三角州の南端に展開する静かな水のある風景−





代表的な湯川家 藍場川からの取水口と邸内に洗い場や中庭の池がある


 萩市の中心街は阿武川の河口付近に形成された三角州上にあり、分流後は橋本川・松本川と呼ばれるが、その分流点付近、三角州の幅が狭まった先端付近にあるのが川島地区である。
 18世紀半ば頃、萩藩主だった毛利宗広によりこの地区の整備が行われた。一番大きなものは三角州の突端付近に取水口を設け、阿武川から水を引き入れたことだ。城下の中心まで引き込まれ、防火用水や物資の運搬に利用された。
 一方、この川島地区では藩営の藍玉座が設営され、藍染のためこの川が染まったことから、いつからともなく藍場川と呼ばれるようになり、今に至っている。
 この地区の町並風景は、この藍場川を仲立ちとした水のある風景が主役といえよう。
 歩いていると長閑な雰囲気が漂っているのを感じる。それは観光客が多く訪ねる市街中心地区から離れていること、幹線道路から外れた地区であることによるのだろう。さらに大きく寄与しているのが静かに流れる藍場川が、素朴な石橋などで邸宅とがつながれている光景を眼にするからかもしれない。
 藍染を行っていた頃の名残は現在でも残っており、敷地内に水を引き入れる構造が残っている旧家も多い。或るものは中庭に池を設え鯉が泳ぎ、他のものは地元でハトバと呼ばれる生活の洗い場が残る。中でも南端近くにある湯川家住宅ではその双方が程度よく残っており、貴重な文化遺産といえる。
 団体客はむろんのこと、観光客の訪れもそれほど多くなく、まだ穴場ともいえる風情を感じることのできる地区である。

  
 









訪問日:2015.11.23 TOP 町並INDEX