手向の郷愁風景

山形県羽黒町【門前町・宿坊群】 地図 <鶴岡市>
 
町並度 4 非俗化度 6 −羽黒山の門前集落−




手向の門前街

 
ここで紹介する町並は霊峰として深い信仰をあつめた出羽三山のうちの一つ、羽黒山の門前集落である。山上には中世から既に修験僧が住み、麓にはそれらの居住地が形成されていた。羽黒山にはこの手向(とうげ)と添川に彼らの住まう集落が形成されていたが、江戸初期に戦災に遭って以来ほぼ手向に集結したため、一大門前街の発達をみた。
 特徴的なのが妻帯して通常の生活を営むものが多かった点で、純粋な門前街・宿坊街というよりは商業都市といってよい側面を持っていた。そのため農民たちもここに転居し商売を始める例も多く、参詣者を相手に大いに賑わったという。『東遊雑記』によると、「手向町といふは、残りなく山伏町にて、長さ五、六町大がひよき町なり。無官の山伏は、国中に配札をして、或は祈祷をなし、或は参詣する人々の先達をし、又は商ひもする山伏多しといふ」とある。
 江戸時代には上四町、下四町に分けられ、それぞれ組頭が置かれ代官の支配を受け組織的に機能していた。
 町の風景としてはその歴史的特殊性から独特の雰囲気が支配しており、それはさまざまな外観の宿坊が今に生きていることに象徴される。現在はむろん一般の観光客にも宿泊提供されているが、寺院を思わせるものや茅葺の屋根を有するもの、一見普通の民家と変わりないものなど雑多な構えであった。しかし門前街の緑濃き風景は洗練されたもので、聖域を控えた宿場といった風情が濃厚に漂っているようであった。
 
 






訪問日:2012.08.13 TOP 町並INDEX