高井の郷愁風景

奈良県榛原町宿場町 地図 <宇陀市>
 町並度 5 非俗化度 9  −忘れ去られたように残る伊勢本街道の宿場町−



 榛原町高井は山間部の狭隘な谷間に忽然と現れる集落で、注意していないと通り過ぎてしまうほどの小さな町場である。
 伊勢街道と呼ばれていた街道は地元での通称を含めると数多くあったが、この高井の地を経由していたものは伊勢本街道と呼ばれこれが伊勢参りには本線のような呼ばれ方をしていた。
(榛原から宇田川に沿い北東進し名張に達していたものは通称初瀬街道と呼ばれていた)今となってはどれを通っても伊勢方面に向う道筋であり、ややこしい。



榛原町高井の町並









 高井は現在の御杖村を経て伊勢に抜ける伊勢本街道の道筋にあたり、弘法伝説のある高井戸が地名の由来とされている。赤埴
(アカバネ)越と呼ばれる峠を控えた土地で、宿場町としての賑わいがあったといわれる。また、ここから室生寺に向う古い道が分岐していたこともあり、室生寺参りの客もここに多くが宿を求めたに違いない。
 印象としては山間の渓谷に沿い、細長く展開する街村であるが、今見渡してみてもかつてお伊勢参りなどの宿場町として賑ったのは全く過去のことのように静まり返っている。家並自体が所々歯抜け状となっているのもそう感じさせるのだろう。今となってはささやかな伊勢街道の案内板があるだけで、予備知識が無ければ単なる山間の田舎町といった風情であった。
 但し、残った町家の質にはその高さが保たれていて、黒漆喰に塗り回された袖壁に屋号を印した旧旅籠と思われる旧家など、散在する伝統的な建物に賑やかだった頃の残照を感じることができる。





訪問日:2008.07.20 TOP 町並INDEX