浜金谷の郷愁風景

千葉県富津市<産業町> 地図 
 
町並度 4 非俗化度 6 −町並風景に個性を与える房州石の町並−






房州石の絶妙な風合いを感じる金屋の路地

 房総半島南部に位置する富津市金谷地区。対岸の三浦半島までの距離が近く、東京湾口を久里浜までフェリーで結ばれていることでも知られている。また観光地・景勝地である鋸山の登山口となっており、実際私が訪ねたときも登山者の姿が多く見え、また国道も混雑していた。




 この鋸山は、耐火性があり、柔らかく加工しやすい性質を有する房州石(金谷石)の産地として江戸時代から盛んに採掘が行われ、明治時代にはそのピークを迎え京浜方面の建築土木資材に多用された。特に横浜港建設の際には重用され、計30万本が採掘されたという。その後は栃木県で産出される大谷石に押されて衰退し、現在は全く採掘されていないが、鋸山に登ると直角に切られた石の断面などが見られる。
 江戸の頃は浜方漁船も多く抱えていたところとされているが、町を歩いても漁村という雰囲気は余りない。一方で、路地に入ってみると所々に石の風合いを感じる独特の風景を眼にすることができる。切削面を武骨に表したまま積まれた、ある意味荒々しい面がありながら、どこか暖かさを感じるのはやはり近年の規格化されたブロック積とは異なるものがあるからだろう。
 国道に近いところにひときわ長い房州石の塀を持つ邸宅がある。廻船問屋を営み、その後は鋸山の石切丁場に携わり、昭和60年に石の産出が終わるまで採石業を操業した鈴木家だ。塀をはじめとして登録有形文化財となっている。
 鋸山は江戸末期頃から名所として知られ、多くの文化人が訪れており、測量家伊能忠敬もこの鈴木家に宿泊したとのことである。 
 
 








 鈴木家に残る房州石の塀

訪問日:2016.05.01 TOP 町並INDEX