花沢の郷愁風景

静岡県焼津市<農村集落> 地図
 
町並度 5 非俗化度 4 −漁業の町の印象とは異なる意外性の集落−





花沢の町並

 焼津市は県下有数の漁獲高を有する港湾都市で、町の風景もそれらの印象が先行する。しかし、ここで紹介する花沢集落は山間に開ける農村集落であり、近年になって古き集落らしい風景が残っていることで訪れる人も増えている。
 緩やかな坂となっている沢伝いの道に沿って家並が展開する。目立つのは石垣と板壁だ。家々の構えは広い前庭を持つもの、一部には長屋門風の重々しい門を構えるものもあり裕福な農村集落といったところである。町家の連なる古い町並というのとは異なり、また鄙びた農村といった言葉も今ひとつ適当ではない。ある程度の富を築いたと思われる家々に見受けられる。
 古代東海道が通っていたところとされ、また中世には近くに城も構えられていた記録がある。今は幹線交通は全てこの地をはずれ、高架橋や長大トンネルで短絡している。一見時代に取り残されたこの集落も、近年になり又新たな息吹が吹込まれつつある。一般受けする「田舎の風景」が展開しているために、炭焼小屋や水車などを触媒にして「花沢の里」として売り出され、駐車場も整備され探索客も見られる。
 古い町並・集落としての観点では残存度と観光地化度が均衡しておらず、余りよい状態であるとはいえないと思う。しかしながらこのような集落風景の維持は、外部の目に触れることにより活性化する側面も大きいことがここを歩くと感じることが出来る。観光地化の取組としては今の所きわめて地味なものであり、好感が持てるものであった。







訪問日:2009.01.03 TOP 町並INDEX