羽生の郷愁風景

埼玉県羽生市【在郷町】 地図
町並度 3 非俗化度 9 −利根川水運の拠点 木綿産業の町−




中央一丁目の町並
 

 羽生市は埼玉県の北部にある町で、東武鉄道が通じまた熊谷・秩父方面から秩父鉄道が伸びてきている。北は利根川に限られた低湿地帯で、市街地を出外れると田園が広がっている。
 中世には羽生城があったが、徳川家康の武蔵入国以後影が薄くなり慶長19(1614)年に廃城となった。その後江戸期は一貫して羽生領という言葉は残ったが、統治的な役割は淡く実質は地区の治水や民間信仰などを取仕切る自治的組織であった。
 この町の発達は利根川水運とその後背地の肥沃な土地を生かしての木綿産業であった。江戸初期あたりから羽生を含む北武蔵一帯は木綿栽培が盛んであり、商品としての流通があったとされる。時代は下って文政期(19世紀前半)には4・9日に六斎市が立っていた。利根川の舟運に恵まれていたことも商業の発達を促していて、木綿をはじめ年貢米などを積み下ろし、江戸からは生活必需品などを積んで帰った。幾つかの河岸には問屋もあった。
 また交通面でも日光街道の裏道として八王子とを結ぶ街路が整備され、利根川畔には関所(川俣関所)が置かれるなど重要な拠点であった。
 浅草から東武鉄道で約60kmの位置であり、東京都内への通勤も可能な地区である。駅の西側は新興住宅地らしいたたずまいも見受けられたが、東側は昭和を思わせるやや古びた印象である。但し木綿産業で栄えた当時を思わせる商家などが目立って残っている姿はなく、古い町並として多く残っているとは言えない。
 しかし所々に出桁調の町家建築や土蔵が残っているのが見受けられ、それらの存在が辛うじてこの町の歴史を感じさせるものとなっている。町並として保存するほど固まって残ってはいないので、早晩失われるであろうことは間違いなく、画一化された郊外都市の佇まいの中に埋没してしまうことだろう。






中央二丁目の町並 中央三丁目の町並




中央二丁目の町並 中央一丁目の町並

訪問日:2008.10.11 TOP 町並INDEX