小野の郷愁風景

兵庫県小野市【陣屋町】 地図
 
町並度 3 非俗化度 9 −崖の上に拓かれた旧陣屋町−
 






小野の古い町の姿は上本町-本町にかけて商店街に吸収されながら残っている  
 
 

 小野市は播磨地方東部の加古川左岸、平野部と丘陵が交錯する地形に町が開ける。町の中心はやや高い位置にあり、これはかつて陣屋町であったことを語っているようである。小野陣屋は藩主小野氏により承応2(1653)年に拓かれた新拠点地で、町人の屋敷割なども行って政治都市を形作った。加古川岸から向うと、市街地の手前で坂を上る形となり、この地形からしても要塞として相応しい場所だったのだろう。
 現在は神戸電鉄により神戸市中心部に直通し、郊外の住宅地帯ともなっているためその輪郭は定かではないが、藩主の居館を南端に置き、対する北側には重臣の屋敷を固めた上で、その間に家中町を置いていた。
 陣屋跡は現在残っていない。家中町らしい武家の雰囲気を伝える家屋も見られないが、商家風の町家建築は辛うじて残っていた。しかしその肝心の僅かな古い町並らしいところが、商店街と化していてアーケードに覆われているのは惜しまれるところである。
 かつてより商家が建ちならんでいた所が現代に至っても町の賑わいの中心となっているのは、全く自然な成行きでありある意味歴史性を踏襲していると感じる一方で、町並景観として残念ではある。新しく普請された装いの店舗の間には、平入りで中二階の形を残す古い建物が、肩身が狭いといった風情で所々に見られるだけである。それらの多くは店を閉じているか、普通の住宅であった。
 この商店街の筋以外では町家建築がほとんど見られないことから、以前はほとんど町家建築で占められていた街路なのであろう。地場産業として算盤をはじめとした木工産業があり、それを要に加古川の水運を得て商業も栄えたといわれ、繁栄を伝えているようだ。一角には道標も残っていて、各地への街道の分岐点でもあったと思わせる。
 既に古い町並として保存するような段階は過ぎていると思われるが、このアーケードを取るだけで明るく開放的な街の雰囲気、そして良き古さを再現できると感じた。





一角には道標が残っていた






訪問日:2007.02.11 TOP 町並INDEX