秋葉山門前(堀之内)の郷愁風景

静岡県春野町<門前町・在郷町> 地図 <浜松市天竜区>
 
町並度 4 非俗化度 8 −秋葉山参りの客で繁盛した門前集落−
 


 秋葉神社は霊山・秋葉山(標高866m)を神体として、和銅2(709)年に創建されたといわれる。中世には秋葉大権現と呼ばれ防火の神として全国から信仰をあつめた。秋葉山に向う道が整備され、秋葉街道と呼ばれる街路も数多く整備された。
 秋葉神社下社より東へ1km余、堀之内地区は古くから門前街として賑わったところである。中心集落は若身という字で、もとは若宮平という地名が転訛したものと考えられている。なるほど天竜川の支流気田川に支流が合流するところで、狭いながらも平地が開けている。ここには気田川の渡しもあり、また船着場もあって上流側や周辺山村からの物資集散地でもあった。町場が発達する要因は満たしており、六斎市も開かれ商業も栄えたという。
 支流不動川に架けられた若身橋は大正15年竣工と親柱に刻まれた格式を感じさせる外観の橋で、それを渡ると町並が連なっている。とはいえ更地となっている箇所、空家も眼につき少々寂しい状況であった。それでも商店の構えをした建物、洋風の医院建築なども見られ地域の中心であっただろうことが伝わってくる。
 中でも伝統的な構えを残す松本屋旅館は奥行き深い堂々たる建物で、秋葉山への多くの参拝客を迎え入れてきた。以前は他にも数軒の旅館があったというが、現在はこの旅館のみとなり、しかも秋葉山への客もなく地域の宴会などで細々と営業されているようだ。
 
 



堀之内(若身)の町並 現役の旅館が残っている







大正十五年と親柱に刻まれる若身橋

 
 秋葉神社は秋葉山々頂にある上社と麓の下社の二社で構成され、12月の火祭りの際には大層賑わうとのことだが、訪ねた時は下社にちらほらと参拝客が見られるのみであった。鳥居の前に門前旅館と称する宿はあったが、営業しているかどうかはっきりしない姿であった。泊りがけで参拝する客はほぼ皆無で、また祭事や初詣時期などごく一部の時期を除いては、ひっそりとした佇まいなのだろう。
 今は若身地区の1軒の旅館だけがかつての賑わいを伝えているようであった。







 
秋葉神社下社


訪問日:2019.11.03・04 TOP 町並INDEX