橋津の郷愁風景

鳥取県羽合町【港町】 地図 <湯梨浜町>
 町並度 3 非俗化度 6 −藩倉が残ることで有名な港町−
 


 橋津地区は県の中部、湖底から温泉の湧く東郷池から日本海に通じる水道沿いに展開する。古い港町であり、鳥取藩の藩倉が残ることで知られている。
 
橋津の代表的な旧藩倉「古御蔵」


 水道沿いは舟運による物資の集結地として古くから重視され、殊に中世までは東伯郡を縦断して流れ下る天神川が直接東郷池に注いでいたこともあり拠点的な港津であった。
 17世紀半ばの寛永期に藩の御蔵がはじめて置かれ、寒漁村から橋津村は一躍重要な役割を任されることとなった。数年後には急速に村の規模を拡大して300軒を超す村に成長し、最盛期には倉庫が16棟、5万俵もの米を収納する能力があった。鳥取藩は「灘倉」と呼ばれる米蔵を他に8棟所有していたが、この橋津の蔵が最も規模の大きいものであった。それは管理する背後地が大きかったからである。灘倉に集められた米は廻米として主に大坂に運ばれ売却されたという。
 現在でも3棟の蔵が残り、最も有名なのは「古御蔵」と呼ばれるものである。その厳かな外観はここが重要な港であったことを物語り、米をはじめとする物資の往き来も頻繁であったことを示している。天保14(1843)建替の棟札が残るという。
 往時は港町の賑わいもたいそうなものであっただろう。しかし今では町並にそれを求めることは困難な状況だ。水道に沿ってのびる街道にはかつては廻船問屋や商家がひしめいていたのだろうが、空地が目立ち現代的な外観の建物に移り変わっている姿が目立つ。かつての栄華の跡は、やや物寂しいものであった。
 古い町並度としては低くとも、歴史度としては重要で訪ねる価値のある集落だ。




橋津の町並




橋津の町並 左は片山蔵

 

訪問日:2009.09.22 TOP 町並INDEX